はまちの話 5

  • 2017.06.14 Wednesday
  • 22:48

続きから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日は一限から授業だった。月曜日から一限を入れたのも、一限があると分かっていたのに結局昨日も新藤さんのアパートでゲームに興じてしまったのも全て自分の責任なのだが、それでもかったるいものはかったるかった。

 

というか、先週は新藤さんと遊び過ぎた。

 

「あんたもしかして、ほんとに新藤さんて人と一緒に暮らし始める気?」

 

昨夜遅く帰ったら、お母さんに怪訝な眼差しでそんなことを言われたけれど、もう既に半分そうなってるので否定しづらい。けど本当にそうなったら、多分牛丼とバイト先の賄いの海鮮丼しか食べなくなって栄養失調で死ぬので、なるべく避けたい。

 

大学に行くとおれはびっくりするほど友だちが少ないので、基本的に授業中も休憩時間も一人で過ごしている。昼休みは学食を食べ終わると、ずっとスマホでゲームをしている。おれの言う「友だちが少ない」は、何というか謙遜とか卑下とかそういう類いではなく、本当に実情として「友だちが少ない」という意味である。

 

そんなに勉強が好きなわけでもないし、何となく毎日だるくて億劫だけど、そういえばバイトだけはそこそこ楽しいかもしれない。

大学一年生の春からお小遣い欲しさで始めたアルバイトで、あんまりやる気も無かったから仕事を覚えるのは遅かった気もするけれど、一年もやっていれば段々自分なりにやり方も見つけられるようになってくる。川崎さんみたいに新人さんが入ってくれば仕事を教えたりもする。

 

人に頼られる、ということがバイト以外だと皆無だから、何となく居場所があるような感じがして安心するのかもしれない。

 

あと、大学では本当に友だちがいないけれど、バイト先の人たちは人数が少ないこともあってけっこうみんな仲が良いから、その輪に加えてもらえている。飲み会に誘ってもらったり、ご飯に連れて行ってもらったり、普段だったら経験しないそういうことは何となく楽しいなと思っている。口下手なので、遊びに誘ってもらってもほとんど黙ってその場にいるだけで終わることも多いんだけれども。

 

あとまあ、新藤さんと仲良くなったのもバイトでだし。そういえば新藤さん、大丈夫かな。今日は午前から授業が入っていたはずなのだけれど、ちゃんと起きれただろうか。新藤さん、実は昨日の夜も酔っ払ってしまって、また美沙さんの名前を呼びながら情けなくおいおいと泣いていたのだ。朝は死んだように寝ていたに違いない。

 

何となくかったるい気持ちで受けていた一限は、そうしてぼんやり新藤さんのことを心配しているうちに終わった。ずっと新藤さんのことを考えていた。何だおれ。彼女か。

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